プロジェクト関連報道   

就任のご挨拶

2011年8月18日   

 エジプト大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト(以下GEM‐CCと略称します)フェーズIIのプロジェクトリーダーとして就任しました鈴木秀幸です。準備期間として2008年6月からフェーズIがスタートし、エジプト政府のプロジェクト実施体制の整備を支援してきました。7月から開始されたフェーズIIは5年間の協力期間で本格的な技術協力を進めていきます。   

プロジェクトサイトは3大ピラミッドを擁するギザ市内に位置し、2月革命で全世界に名を馳せたタハリール広場からはバスで数十分の距離にあります。このサイト内には、新考古学博物館の建設予定地もあり、新博物館が完成すれば展示される文化財の保存修復を隣接のGEM‐CCでできるようになります。
新博物館の施設建設や機材の整備は日本の円借款で1/2を実施し、文化財の保存修復に当たる専門家の育成は技術協力で実施するというかたちです。プロジェクトでは博物館の運営管理を実施していく上で欠かせない、文化財の保存修復やデータ整備の専門家を育成していきますが、そのためエジプト国内や日本で日本人専門家による研修を実施していきます。日本の文化財保存修復の第一線で活躍している専門家に協力していただき、研修講師として参画していただきます。日本の保存修復技術がエジプト人専門家に移転され、活用され、新博物館の展示資料の質の向上に役立てられることで、新博物館が施設の規模だけではなく、展示品の質や内容においても世界に誇れる施設として世界中から認識されるようになる日も遠からず来るのではないかと期待しています。  

私はアジア・アフリカ・中東地域に滞在した経験がありますが、エジプトほど国内に豊富な文化遺跡を有する国は少ないと思います。エジプト古王国、中王国、新王国と続き、4000年の歴史と多くの文化遺産を有するエジプト。この土地に暮らすエジプト人が発掘・修復された展示品に気軽に接し、自らの歴史認識を深めながら自国の文化遺産を誇りを持って語り伝えるようになってもらえればいいなと思います。    

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       鈴木秀幸  

フェーズ2を開始しました

2011年7月1日  

2011年7月1日から、プロジェクトの第2フェーズ(本格協力フェーズ)を開始しました。第2フェーズでは、今後約5年間、人材育成計画に基づいて、大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)に所属する、エジプト人の保存修復・保存科学の専門家の育成を支援する予定です。   

プロジェクトのカウンターパートであるGEM-CCは、2010年6月にエジプト政府によって設立されました。大エジプト博物館(GEM)に展示される予定の文化財の移送も始まり、現在、GEM-CCでは保存修復、科学、エジプト学の専門家を中心とした約140名のスタッフが活動しています。GEM-CCのセンター長は未決定ですが、施設、人材がそろったことで、包括的な人材育成プログラムを実施する基本的な条件が整いました。これをうけ、2011年5月から6月に、日本から第2フェーズ開始のための詳細計画を策定する調査団が派遣され、カウンターパートと協議を行い、2011年7月から2016年3月までの約5年間、人材育成プログラムを実施することが決定しました。   

2008年から準備期間として開始した第1フェーズを通じて、エジプトの文化財保存分野において不足している部分、エジプト側がより技術や知識を高めたいと考えている点等が明らかになりました。これらの点を踏まえて、(独)国立文化財機構等の関係機関協力を得つつ、「予防保存」、「保存修復」、「保存科学」の3テーマを柱として、世界で最も重要な古代エジプトコレクションを所蔵するGEM付属の保存修復センターとして、またエジプトだけでなく、北アフリカ、中近東地域における中心的な施設として成長するために、フェーズ2では、さまざまな研修を実施していく計画です。   

データベース構築作業を続けてきたADDの活動は、2012年4月から、エジプト側によって設立される大エジプト博物館情報センター(GEM-IC)へと引き継がれます。現在、引継ぎの計画について、エジプト側と協議を行っています。   

古代エジプトから受け継がれた文化財は、エジプトの人々にとって貴重な文化遺産であり、また重要な観光資源です。2011年1月から2月に起こったエジプトの民主化運動の際には、若者たちが博物館の周囲に「人間の鎖」をつくり、文化財を守りました。フェーズ2では、より一層充実した人材育成支援を行い、文化財をより良い状態で後世に伝え得る保存修復専門家を育成していく手助けが出来ればと考えています。

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