壁画チームでは、リードの全対象遺物の診断分析を完了し、残りのフォローの対象遺物もXRF(蛍光X線分析)による最終的な診断分析を実施しています。
今回の分析は、5点の小さい壁画を主な対象にしています。これらの壁画は2019年1月にEM(エジプト考古学博物館)から最後に移送された壁画です。発掘者の報告書によると、うち2点はセシェム・ネフェルのマスタバから発掘されたものといわれています。このマスタバは、ド・モルガンがダハシュールのイニ・スネフェル・イシェテフのマスタバ周辺で発掘されました。セシェム・ネフェルは、王に仕える書記という役人で、おそらくイニ・スネフェル・イシェテフと同時代の人物と考えられています。(古王国時代、第6王朝初め頃)
分析作業では、壁画に使われた顔料と下地の化学組成を確認することを目的としています。同チームの専門家たちは、壁画の製作過程で使用された顔料を明らかにし、他の壁画と比較することで古代の彩色技法を理解することを目指しています。分析で得られた結果は、この貴重な遺物を長期間保存していくのに最適な方法を選択するために生かされます。