Archeological Database Department (以下、ADD)の立ち上げ

GEMに所蔵される予定の文化財は10万点にのぼります。これまでGEMのために雇われたデータ入力チームがエジプト考古学博物館の一室を借りて、6万点の文化財のデータベース化をしてきました。日本人のデータベース専門家は、データベース・ソフトの保守・改善を技術的に指導していました。しかし、データ入力のルールや作業 手順が確立されていなかったことなどから、入力されたデータに入力ミスやデータの重複が見つかりました。また、入力チーム・メンバー間にはエジプト学の知識やモラルのレベルにばらつきがあり、中核的なメンバーが辞職するなどの危機に直面しました。こうした状況にあって、エジプト側から、エジプト人スタッフがきちんと文化財データベースを作成できるようなしくみ作りをしてほしいとの要請がありました。エジプト側と協議を行った結果、日本人のデータベース専門家のもと、プロジェクト内に既存のデータベースの再構築を行う部門(ADD: Archeological Database Department)を立ち上げることにし、データベースの再構築に取り組んでいます。

ADDとは、JICAが設置したエジプト人によるプロジェクト・チームで、どのような体制・手順でデータベースを構築していくのかを、実際に実施、改善しながら、よりよいやり方を模索しています。JICAがある程度協力した後には、エジプト側が、ADDのメンバーとやり方をそのまま取り入れてデータベース構築を継続していくことになっています。

ADDの主な活動

ADDは主に、各地の博物館や倉庫(サイト)に出向き、データベースに登録されている文化財を特定し、登録番号や大きさを再確認するとともに、基準に則って文化財の写真を撮影し、GEMへ移送される文化財として梱包し、倉庫内で取り分けて保管しておくという作業をしています。

ステップ 1:準備
ステップ 2:ステップ2:遺物の特定
ステップ 3:登録台帳の確認
ステップ 4:遺物の測定
ステップ 5:遺物の撮影
ステップ 6:遺物をGEM用収 納箱に移動
ステップ 7:インベントリー.シートのチェック&写真の印刷

ADD活動実績

現在、各サイトで遺物の確認作業を開始しています。ところが、収蔵庫の検査官などの関係者の協力がなかなか得られないこともあり、この作業を進めるのは容易ではありません。様々な理由で関係者の協力が予定通り得られない場合には、作業を中断せざるを得ません。また、日々、サイトでの作業フローの見直しを行ったり、事務所でのデータ確認方法のルールを決めて、より効率的な作業管理を進めています。

これまで4か所の収蔵庫での確認作業が終了し、5つ目の収蔵庫に取りかかっています。

確認作業が終了した収蔵庫
場所 期間 確認された文化財数
テル・バスタ 2008年12月、2009年2月 84
ヘルワン 2009年2月 137
エル・マタレイヤ 2009年3月 959
ギザ 2009年5月~6月 2076

現在作業中の収蔵庫:サッカラ(2009年7月~)

この他、カイロ考古学博物館の収蔵庫での作業を進めるために、関係者との調整を行っています。

エジプト学プレゼンテーション

ADDスタッフは、より正確なデータを整備するため、収蔵庫での遺物の確認作業とあわせて、古代エジプトの各時代の遺物の特徴などを勉強し、部内で発表会を行っています。

これまで発表したテーマ
1 ステラの機能とアピス神
2 ツタンカーメン、蓮の花、ベス神
3 マンシアット・エザートのパレット
4 ツタンカーメンのヘッドレスト
5 カテピーの偽扉
6 カノピック(内臓を詰めた壺)
7 テプ・エム・アンクの偽扉
8 ツタンカーメンの半身像
9 メクネティ・イン・イルティ
10 メケトラの川船
11 メジャ・シェセットの葬祭用ステラ
12 ホルスの魔術用ステラ
13 ディジェッド・マアト・イユ・S・アンクのシャブティの箱
14 末期王朝時代のエジプト彫刻
15 中王国
16 新王国
17 古王国